解体工事とは

古い住宅などを取り壊して、土地を新しい用途として使う場合に必ず行わなければならないのが、今ある建物の解体です。解体工事には、さまざまな種類があり、それぞれで必要となる知識や資格も異なります。
今回は、解体工事の種類や必要な資格などについて解説します。

建物や家屋を取り壊す解体工事

解体工事とはその名のとおり、建物や家屋を取り壊す工事のことを言います。一口に解体といっても、建物そのものを解体することもあれば、その周囲にある塀の解体やリフォームを行うための解体など、その種類はさまざまです。また作業そのものも、解体用の足場や、囲いの設置、窓や建具の撤去、屋根瓦の撤去、建物本体の取り壊しに至るまで、その手順は複雑で、単に壊せば良いというわけではありません。加えて、解体後に出てきたがれきの運搬や処理も発生するため、幅広い知識や技術が求められる仕事でもあります。

解体工事の工法

解体工事には、大きく分けて3種類の工法があります。

①手壊し工法
解体工事の中で、基本となるのが手壊し工法です。その名のとおり、人力で建物を解体する工法で、人の手によって行われるため、騒音や振動が発生しにくい上、建設リサイクル法に則った分別解体が、高い精度で実行できることがメリットです。対して、人力であるがゆえに、大規模な解体作業には向かないことや、工期が長くなる傾向があること、またコスト高になることなどのデメリットがあります。そのため、道路が狭くて重機が入れない場所や、騒音や振動が許されない場所といった特別な事情のある物件以外で、この工法が用いられることはほとんどありません。

②重機併用工法
手壊し工法にプラスし、重機を用いながら解体工事を行うのが重機併用工法です。この方法では、上述の建設リサイクル法にかかる部分の解体や、重機の設置場所を確保するまでを人力で解体し、本格的な解体では重機を用います。人力と重機、それぞれの強みを発揮しながら作業を行うことができるので、工期やコストの面でバランスが良く、解体工事の中では最も一般的な工法となっています。

③圧砕機工法
鉄筋コンクリートのような、頑丈な建物を解体する際には、人力や重機だけでは作業を進めることができないために圧砕機工法が用いられます。油圧クラッシャーやショベルなど、圧砕機と呼ばれる機器をバックホーなどのベースマシンに取り付けて、そのパワーで鉄骨や鉄筋を切断・解体していきます。その歴史は古く、1970年代中頃から現代に至るまで、鉄筋コンクリート解体の主流工法となっています。

解体工事には、多くの許可と資格保持者が必要

解体工事を行うには、事業者と作業員のそれぞれに必要な資格があります。まずは事業者として必要になってくるのが、建設業許可、または解体工事事業登録です。建設業許可は都道府県ごとにするもので、請け負う作業により必要な許可が異なりますが「土木工事業」「建設工事業」「解体工事業」の3つがあります。

対して解体工事事業登録は、申請は建設業許可に比べると簡単ではあるものの、解体工事のみの許可となりますので、建築はできません。さらに対応できる工事も税込み500万円未満のものに限定されており、一軒家のような小さめの解体であれば500万円を超える工事はあまり発生しませんが、マンションやビルのような規模の大きな工事にもなると、500万円を超えてしまうことも少なくないため注意が必要です。

実際に、解体工事を行うために必要な資格は以下のとおりです。

・1級土木施工管理技士
・2級土木施工管理技士(土木)
・1級建築施工管理技士
・2級建築施工管理技士(建築)または(躯体)
・技術士 建設部門
・技術士 総合技術監理部門
・1級とび技能士
・2級とび技能士 ※合格後3年間の実務経験
・登録解体工事試験合格

このいずれかの資格を持った技術者がいることにより、初めて解体工事を請け負うことが可能となります。
これらの資格がなくても、実務経験や学歴が基準を満たしていれば、解体作業を行うことはできますが、2015年公布の「建設業法施行規則の一部を改正する省令」で、資格要件の見直しが行われ、変更となっているものもありますので注意が必要です。

また事業者は、工事の現場や状況に合わせて、資格所有者を作業責任者として現場に配置しなければなりません。主な資格は以下のとおりです。

・地山の掘削作業主任者:2m以上の地山の掘削作業を行う場合
・足場の組立て等作業主任者:5m以上の高さがある足場の組立てや解体を行う場合
・建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者:高さ5m以上の鉄骨造建築物の組立て・変更・解体を行う場合
・コンクリート造の工作物の解体作業主任者:高さ5m以上のRC造建物の解体・破壊を行う場合
・特定化学物質等作業主任者:アスベストを取り扱う場合

これらは、いずれも労働安全衛生法に定められた、国家資格になります。解体工事は、法律によって詳細な決まりがあり、誰もが気軽に取り組めるといったものではありません。このことからも、解体工事の難しさや事業としての重要性がわかります。

今回は解体工事について、その代表的な工法や必要な資格等について解説しました。解体工事には、さまざまな工法があり、それを実施するための必要な認可申請や資格も数多くあります。また、建設リサイクル法に代表されるように、その時その時の時代背景により、解体工事に求められる要素は、今後も増えていく可能性があります。解体工事を行う際は、技術だけでなく、法律や制度などへの関心も常に持ち、技術と知識の両面を磨いていく必要があります。

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