医療福祉施設の調理師の仕事


「調理師」と聞くと、なんとなくイメージは湧きますが、具体的な仕事内容や資格の取得方法など、詳しく説明できる方は少ないのではないでしょうか?調理師は飲食店だけでなく、介護や医療などさまざまな場面でも活躍できる仕事です。そこで今回は、医療福祉施設で働く調理師の仕事内容や資格の取得方法などについて解説していきたいと思います。調理師に興味のある方や実際に目指している方、ぜひ最後までご覧ください!

まず調理師とは

調理師とは、国家資格を持ち、日常のさまざまな場面で調理業務を行う人のことを指します。たとえば、病院の場合は入院している患者に、介護施設ではサービスの利用者に提供する食事の管理を担当している人です。調理師は「名称独占資格」となっているため、調理を行っている人であれば、誰でも名乗れるというわけではありません。国が定める「調理師法」には次のように書かれています。

調理師法
(名称の使用制限)
第八条 調理師でなければ、調理師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
(中略)
第十一条 第八条の規定に違反した者は、三十万円以下の罰金に処する。

法律で定められている通り、この第八条に違反すると30万円以下の罰金が科せられます。それほど、調理師資格には重みがあり、重要な役割がある仕事といえるでしょう。ちなみに、調理業務を行う無資格の人は一般的に「調理員」と呼ばれることが多いです。

調理師の仕事内容

調理師の仕事内容は、働く場所によってさまざまです。今回は、病院と介護施設に絞って解説していきます。

●病院での仕事内容

入院中の患者に対し 、管理栄養士や栄養士が作成した献立に沿って調理した食事を提供します。施設によっては調理だけでなく、清掃や食器洗浄や配膳なども業務内容として含まれる場合もあり、その線引きはあいまいです。大規模病院であれば、1度に数百食作ることも珍しくなく、病院には通常幅広い病状や体調の患者が入院しているため、患者さんごとに最適な献立内容で調理をすることが必須条件となります。また、免疫力が落ちている病気の方に向けた食事を提供するので、食中毒予防などの衛生管理は徹底しなければなりません。その日に作った料理は、必ずその日のうちに提供することが基本となり、前日の仕込みや作り置きは認められません。その分残業が少なく、プライベートも大切にできる点はメリットといえるでしょう。

病院調理師が作る食事は、大きく分けて「一般食」と「特別治療食」の2種類があります。それぞれの食事の違いについては、以下の通りです。

・一般食
普通食とも言われ、特別な制限のない食事のことです。高齢者や嚙む力が弱い方に合わせて、柔らかさや形状が通常とは異なる「嚥下食(えんげしょく)」も、これに含まれます。嚥下食に関しては、ゼリー状からペースト状、刻み食や一口大サイズなどさまざまです。

特別治療食
一般食とは反対に、特別な制限のある食事のことを指します。具体的には、カロリーやタンパク質、脂質や塩分など、疾患に合わせて制限するのが一般的です。制限するものを区別するため、エネルギーコントロール食やたんぱくコントロール食などとも呼ばれます。その他、消化管手術を受けた患者に提供する「術後食」や、消化性潰瘍の患者に提供する「潰瘍食」なども特別治療食になります。

●介護施設での仕事内容

管理栄養士や栄養士が作成した献立に沿い、調理する点は病院と同じですが、提供対象は高齢の利用者になります。主な職場としては、次の施設があげられます。

● 特別養護老人ホーム
● 有料老人ホーム
● 介護老人保健施設
● グループホーム
● ケアハウス
● ショートステイ(短期入所生活介護)
● デイサービス・デイケア
● サービス付き高齢者向け住宅

飲み込むことが難しい方には、とろみをつけたり、ペースト状にして提供します。また、噛むことが苦手な方には、刻み食や口に入れやすいサイズにカットするなど、さまざまな状況に応じた調理法が必要です。他には糖尿病や肝臓病の方には、タンパク質や塩分、カロリー制限をするなど、利用者ごとに多くの工夫がされています。

調理補助とは?

病院や介護施設によって、調理補助の方を配置している場合があります。調理補助とは、その名前の通り「調理業務を補助する」役割を持つ人です。具体的には、食材の洗浄や切り込み、食器や調理器具の準備や洗浄を担当しています。職場の規模によっては料理の配膳や下膳、調理場の清掃や食材の発注・管理まで担当しており、幅広い対応力が必要です。ここまで見ると、調理師と業務内容は変わらないように見えますが、資格を有していないため、調理師と名乗ることはできません。職場によっては立場を明確化するため、調理師と調理補助で役割を分担しているといったケースもあります。後述する調理師資格の取得方法には、実務経験が関わるパターンもあるため、調理補助としての経験を積む方も多いです。

調理師になるためには!

調理師資格を取得するためには「調理師学校で学ぶ」「実務経験を積んで、試験に合格する」という、2通りの方法があります。ここからは、それぞれの取得方法について見ていきましょう。

・調理師学校で学ぶ

厚生労働省が指定した調理師養成施設で学び、卒業することにより、調理師免許を取得することができます。該当する養成施設としては、主に大学・短大・専門学校・高校にある調理科です。これは全国に配置されており、誰でも通いやすい体制が敷かれています。調理師養成施設の卒業後は、住所地の都道府県知事に申請することで、試験を受けなくても免許を取得できる点が特徴です。

・実務経験を積んで、試験に合格する

免許取得には、実務経験を積んだうえで試験に合格するという方法もあります。経験内容としては、飲食店などで週4日以上かつ1日6時間以上の勤務を2年以上行うというのが条件です。勤務形態に制限はなく、正社員の他にパートやアルバイトでも条件を満たせば、受験資格がもらえます。また、必ず1か所でのみ働かなければならないという決まりもありません。転職などで職場を変えて働いていたとしても、通算して条件を満たせれば大丈夫です。ただし、同時期に複数施設で働いているWワークの場合、勤務時間の合算はできないという規則となっています。さらに1か月以上の長期休暇も勤務期間にカウントできません。あくまでも、1日に1か所の施設で6時間以上働いていた日数のみが、条件に該当してきます。実務経験にみなされる施設は以下の通りです。

● 飲食店営業
● 魚介類販売業
● そうざい製造業
● 寄宿舎、学校、病院等の給食施設

ちなみに、以下の業務は実務経験として認められないので注意しましょう。

● 喫茶店営業
● 食肉処理、食品製造、飲料の調製
● 簡易な飲食店営業の対象となる調理

実務経験を証明するためには、調理業務従事証明書を勤務先に作成してもらう必要があります。受験者本人の記入や修正は認められないので、必ず実務経験を積んだ勤務先の代表者に、作成を依頼しましょう。複数の施設で勤務していた場合は、それぞれから証明書をもらわなければなりません。これは、勤務期間中に支店異動があった際でも同様です。調理師試験は都道府県ごとに実施されており、日程や会場、受験料は場所によって異なります。試験の中に実技は含まれておらず、全て4択から選ぶマークシート方式の筆記試験となります。全60問から構成されている試験内容は、以下の6科目から出題されます。

● 公衆衛生学
● 食品学
● 栄養学
● 食品衛生学
● 調理理論
● 食文化概論

目安として、全科目の合計点数が60%以上で合格となります。ただし、1科目でも平均点を大きく下回ると、不合格となってしまうので注意が必要です。全ての教科をまんべんなく学習し、マークミスに気を付けることが合格への一歩となります。


調理師は、いつの時代も社会からの需要があり、今後も見通しが明るい職種です。特に、医療や福祉施設の調理師は、今後さらに需要が高まることが予想されます。国家資格なので、取得までには時間がかかりますが、働きながら調理師を目指す人も多いです。飲食店で勤務しつつ、仕事終わりに勉強をしている人もいるため、無理なくチャレンジできる資格といえるでしょう。
plusjobでは、未経験や無資格の方でも可能な調理師や調理補助求人も多数掲載中です。興味がある方は、ぜひ一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか!

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